大阪の「だんじり」とは【泉州・岸和田】
大阪と言えば「だんじり」というぐらい全国的にだんじりは有名です。特に岸和田のだんじりには毎年50万人もの人が訪れます。もはや日本で最も有名な祭りのうちの1つであるといっても過言ではないのかもしれません。
だんじりの基本
だんじり祭りとは?
だんじり祭りは豊作や豊漁を祝うお祭。岸和田が有名ですが、岸和田以外にも泉大津、忠岡、貝塚、泉佐野など泉州地域や河内地域、一部の大阪市内、兵庫県の一部地域でもだんじりを見ることができます。
泉州地域に限定すると、体育の日(10月の第2月曜)の前日の休日にだんじり祭りを行う地区が多いです。ただし、岸和田の海側の地区は敬老の日(9月の第3月曜日)の前日の休日に行われ、少し日程が早いです。
そして、そのだんじり祭りの中心となるのが、だんじりの曳行。だんじりとは車輪などをつけて主に曳くタイプの木造の地車で、通常はだんじりは大・小2つの屋根を持っています。屋根に乗る人たちは大工方と呼ばれ、だんじりの中でも花形の人たち。

だんじりもよるんですが、だんじりには『前てこ』と呼ばれる全部に二本の細い棒、『後ろてこ』と呼ばれる後ろに太い棒が1本刺さっており、このてこをうまく使うことで、だんじりが高速で曲がる「やりまわし」を可能にします。

だんじりの歴史
だんじりの起源に関しては、公式の記録がなく、あまりよくわかってはいないようです。1703年に岸和田に三の丸神社が作られたころに始まったという説が有名ですが、堺で始まったという説もあります。

いずれにせよ、だんじりは昔からとても大きな祭りだったわけではなく、現在のような大型のだんじりが登場したのは江戸から明治にかけてのようです。
そして、交差点を高速で駆け抜ける「やりまわし」が始まったのも昭和に入ってからで、全国的に有名になったのは1990年代のこと。そこまで長い歴史があるわけでもないんですね。
おみこしとだんじり
さて、日本の祭りというとやっぱりおみこしですよね。しかし、おみこしとだんじりを比べてみるとずいぶん違うんですよね。
まず、神輿はだんじりのように車輪がなく、曳くのではなく、担ぐものですよね。

そして、おみこしというと、神社が所有するような宮神輿と町会が所有する町神輿があるんですが、だんじりはほとんどすべてが町会が所有するもの。毎年、祭りのシーズンになると、町会が熱心に寄付を募りに訪問したりします。
また、おみこしだと祭礼のシーズンになると氏神様を本殿からおみこしに遷し、町内を巡行することでその土地を清めたり、氏子地域の繁栄をお見せするといった性格があるのですが、だんじりには氏神様を遷すということはしません。
祭礼の半ばで必ず『宮入り』というのもだんじりも行うんですが、これは氏神様の神社に参拝し、五穀豊穣を願うイベントです。
上だんじりと下だんじり
だんじりとはいっても、実は大きく分けて2種類存在します。それが『上だんじり』と『下だんじり』。岸和田のだんじりが下だんじりです。
上だんじりは種類が多く、上だんじりの中でも住吉型や堺型、神戸型など様々が区分があったりします。ただ、上だんじりはだんじりの周りに『担い棒』と呼ばれるバーのようなものがついています。
また、上だんじりには噛み獅子と呼ばれる獅子が屋根を噛んでいるようなものが屋根に取り付けられています。
上だんじりも昔はたくさんあったのですが、最近では岸和田のだんじり人気や、下だんじりのやりまわしのやりやすさから、新調する際に上だんじりから下だんじりに変えるところも多くなってきています。
だんじりの魅力
やりまわし
だんじりの魅力というと、やりまわしでしょうか。だんじりは角を曲がるとき、走りながら綱を引っぱり、勢いよく駆け抜けていきます。
特に、前てこと後ろてこの協力がとても大切で、前てこがブレーキをかけながら、後ろてこが曲がる瞬間に後ろてこにくっついた『ドンス』と呼ばれる紐を引っ張ります。
ひっぱりが弱かったり、ひっぱり過ぎると、曲がりきれずに壁や電柱に衝突したりすることもあります。
動く歴史絵巻
だんじりの本当の見どころというと、そのだんじりに施された細かな彫刻。だんじりはケヤキを用いて釘を使わず作られており、その至る所に歴史をテーマにした非常に美しい彫刻が施されています。この彫刻の精巧性のためだんじりは動く歴史絵巻とも呼ばれています。
岸和田型の下だんじりも上だんじりも彫刻がたくさんありますが、一般的には上だんじりの方が彫刻が多く、見ごたえがあります。
この彫刻は町ごとに異なっていて、見比べてみるとなかなか面白いんですよね。
いろいろなだんじり祭り
あまり知られていないのは岸和田以外にもだんじりをやっているところが多いということ。実は、大阪の南部である泉州や河内、一部の大阪市内、もっと言えば兵庫県にもだんじりがあります。
そして、各地域のだんじりは岸和田のだんじりと少しずつ違ったりして、とてもユニークです。
泉大津
全て上だんじりを使うのが泉大津ですが、もともと岸和田のだんじりは泉大津より購入され、それが岸和田城の門をくぐることができなかったことから改良されて下だんじりが作られたと言われており、泉大津のだんじりはそういった点で歴史はかなり古いです。
泉大津ではだんじり同士をぶつけ合う「かちあい」が行われます。
深井・鳳
だんじりを使う多くの地域は、夜の7時からは灯入れ曳行となり、昼間の荒々しい感じとは異なりゆっくりと曳きます。
夜は視界が悪いのでやりまわしなどはかなり危険だからなんですが、深井のだんじりは夜になっても休まず走り回ります。
また、深井では下だんじりと上だんじりの2つがあるので、ここに来るだけで上と下の両方が楽しめるのがうれしいです。また、人が少ないので、かなりゆっくり見れます。
阪南
泉州の南部、和歌山との県境に位置する阪南市では毎年10月にだんじりではなく、やぐら祭りが行われます。
やぐらはだんじりの見た目とはずいぶん異なります。やぐらの大きな特徴は2つの大きな車輪。さらに、だんじりは鐘や太鼓を担当する人が中に乗り込むのですが、やぐらは後ろに太鼓がついていて、一緒に走りながら太鼓を鳴らします。
また、やぐらには車輪のあたりに本幕と呼ばれるカーテンのようなものがあるんですが、これがどこのやぐらもとても美しいです。
しかし、だんじりと似ている点も多くあり、大屋根に噛み獅子があり、かなり精巧な彫刻が施されています。
平野
大阪市内ではだんじりの曳行があまりなく、小規模な神輿のところが多いのですが、平野(旧平野郷)の夏祭りでは立派な上だんじりの曳行を見ることができます。
この平野のだんじりも歴史が古く、中には1845年製のだんじりもあります。
泉州のだんじり祭りとは少し異なるのですが、それでも迫力はとてもあります。杭全神社に宮入りするので、杭全神社付近で見るのがベスト。
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