熊野古道・紀伊路を歩く 3: 和泉府中~山中渓
大阪から紀伊田辺へと続く熊野古道の紀伊路。大阪市内から歩いてもう和泉府中まで来ました。今日はその続きで、和泉府中から大阪最南端の山中渓までを歩いてみました。住宅地を通るところが多いですが、泉佐野を過ぎたあたりからは風景は田舎になり、街道の街並みが残るところもあり、散歩にはとてもいい道です。
※紀伊路の全行程の記録や他の熊野古道の記事はこちら!
熊野古道 紀伊路: 和泉府中 ~ 山中渓
泉佐野~久米田
さて、前回の和泉府中駅近くにある井口王子からの続きです。ここから貝塚までの10kmほどは府道30号線に沿って歩いていきます。大きな道で交通量も多い道です。実は旧道はこの府道30号線にそってまだ一部存在しているのですが、家屋によって分断されていたりします。
井口王子から30分ほど行くと久米田駅近くに来ます。この久米田駅の西側、ちょうど畑となっているところはもともと池田王子があった場所です。王子となるものは何も残っていません。すぐ目の前を紀伊路の旧道が走ります。この辺りには小栗街道と書いた標識もちらほらありますが、これは紀伊路が小栗判官にちなんでこう呼ばれているからです。
久米田~泉佐野
津田川を越えると貝塚市。貝塚市は紀州街道の特に願泉寺の付近には古い町並みも残りますが、熊野街道沿いには特に目立った歴史的な地区はありませんでした。貝塚市に入ったすぐのところの府道30号線沿いにある工場が浅生川王子のあった場所なんですが私有地なので残念ながら入ることができません。工場の入り口付近には神社がありますが、これは王子とはなんら関係ないもののようです。
さて、貝塚の堂ノ池の交差点まで来ると府道30号線からそれて小さな道を入っていきます。ここから山中渓まで住宅地の中の道を通り、結構ややこしいです。地図でしっかり確認しながら行かなければいけません。
しばらく行くと、道から少し離れたところに正福寺があります。この辺りに倉持王子があったようです。さらにその向かいの南近木神社には近木王子がありました。今ではどちらも残っていません。ここでだいたい山中渓まで半分ぐらいって感じでしょうか。でも、まだまだ遠いです。結構疲れたので、この辺りで今日の昼ごはんにしました。
しばらく歩いて見出川を越えると泉佐野市です。この辺りには鶴原王子があったようですが、場所はわからなくなっているようです(貝田会館のところ?)。一方、佐野王子には小さな碑がたち、周囲は公園になっていました。ちょうど春だったので桜もきれいでしたよ。
泉佐野~信達
泉佐野市でJR関西空港線の橋げたを越えると一気に田舎になっていく感じです。江戸時代によく使われた紀州街道もここを通るので、街道の雰囲気が残っているところが多いです。泉州と言えば、泉州たまねぎと水なすが有名で、特にたまねぎは収穫シーズンに来ると紀伊路を歩いていてたまねぎのにおいがするほど。なんとも季節感が出ていいですね。
しばらく紀伊路を行くと、自動車工場が籾井王子あった場所です。この籾井王子は王子の中でも五体王子と呼ばれ(五体王子に入らない説もあります)、王子の中では特に重視されたものでした。残念ながら工場の土地の中なので見ることはできないのが残念です(言えば見せてもらうことができるようですが)。
さらにここから30分ほど歩くと海会寺跡に着きます。この海会寺は今は存在していませんが、発掘調査の結果、7世紀にたてられた非常に古いお寺で、法隆寺式の伽藍を持っていたことが分かっています。なお、この寺のすぐ近くに厩戸王子がありました。少し古道からは外れたところのゴルフ場付近にあるので要注意です。しかし、王子が古道から離れたところにあるのはなぜなんでしょう。紀伊路のコースは変わってしまったんでしょうか?
信達宿
海会寺を超えたあたりからは熊野街道の様子がとてもよく保存された信達のあたりを歩きます。ここは信達宿と呼ばれ、紀伊路の数少ない宿場町でした。これもこの道が紀州街道とかぶっていたからなんでしょうか。紀伊路の中で宿場町の雰囲気が残るのはこの信達宿と山中渓の山中宿のみです。この信達宿はJR阪和線和泉砂川駅のすぐ近くです。快速も止まる便利な駅なので、疲れている場合は、ここから帰ればいいのかも。
信達~和泉鳥取
和泉砂川からは小さな峠のようなところを超えて、和泉鳥取駅を通ります。和泉鳥取駅の前にはこの大阪府阪南市で最も大きな神社である波太神社を遥拝する鳥居がありますが、ここから波太神社は歩いて30分ほどかかるようです。当時の人はこの熊野街道を通りながら、いろんな神社を拝んだんでしょうね。せっかくここまで来たから波太神社も行ってみたいのですが、山中渓駅まで急ぐことにします。和泉鳥取の次が山中渓。もうすぐです。
この鳥居の裏に駐車場の隅に長岡王子の跡があります。見落とさないように注意です。
琵琶ヶ岸懸
大阪府の熊野古道のマップでは駅前の広い道をまっすぐ山中渓駅へと向かうのですが、実はこの長岡王子のある和泉鳥取駅から林の奥へと入っていくのが紀伊路の旧道。旧道には琵琶ヶ岸崖という崖を通っていきます。距離にしてたった数百メートルの道なのですが、山道になっており、名前からもわかる通り本当に崖なのでかなり危ないです。また夏は和泉鳥取駅側は草が多い茂っており、入り口がわかりにくいかも。そういう場合は反対側の地蔵堂王子から入ると行きやすいです。
崖の部分には柵がなく、チェーンにつかまりながら歩く感じです。雨が降ったらかなり滑りやすいのかも。すべると下に流れる川に真っ逆さまに落ちるので注意です。ちなみに名前の琵琶ヶ岸崖というのも、法師がこの崖から落ち、木に引っかかった琵琶が法師の死を弔うかのように鳴り響いたというお話から来ています。
山中渓
もうすぐ山中渓って感じです。山中渓は以前紀泉アルプス(おおさか環状自然歩道)を歩いたときに来ました。地蔵堂王子から山中渓駅まで広い道路を歩きますが、途中に馬目王子があり、小さな碑がたてられているので、見逃さないよう注意です。
山中渓駅直前になると、街道っぽい雰囲気の道が出てきます。ここが山中宿で、紀伊路では珍しい宿場町です。この辺りは紀州街道としても利用されていたので、温泉旅館もあるなど活気があったようですが、阪和線ができてから衰退していったようです。今では旅館がかろうじて残っているって感じでしょうか。
山中渓というとやっぱり桜ですね。春には山中川ぞいに桜が咲き乱れ、多くの人が訪れる大阪南部の人気桜スポットです。特に電車が桜のトンネルを抜けるところはなかなかかっこいいようで、ホームでは撮り鉄の方々が多くいらっしゃいました。
さて、今回は和泉府中から山中渓まで一気に来ました。これで大阪府は北から南まで歩いた感じです。残念ながら紀州街道のように歴史的なお寺や神社が多く立ち並ぶような街道ではありませんでしたが、それでもなかなかいい散歩になったと思います。当初はこの山中渓までの予定だったのですが、せっかくここまできたので紀伊路の終点である紀伊田辺まで歩いてみたいと思います!!
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