大阪府

熊野古道・紀伊路を歩く 2: 阿倍王子神社~和泉府中

熊野まで続く熊野街道。この中でも紀伊路は大阪八軒屋から和歌山の紀伊田辺へと向かうルートです。今日はその紀伊路のうち、天王寺から和泉府中までの部分を歩いてみます。残念ながらそのほとんどが住宅地だったりするのですが、沿道には見どころも多く、散歩には最適な道です。

※紀伊路の全行程の記録や他の熊野古道の記事はこちら

熊野古道・紀伊路を歩く: 阿倍王子神社から和泉府中

紀伊路: 阿倍王子神社~住吉大社

前回の続きの阿倍王子神社からです。阿倍王子神社は天王寺から数キロ下ったところにあります。ここからは阪堺上町線沿いの道へと戻り、南へ向かいます。今日の目的地の和泉府中へはJR阪和線沿いに下っていく感じですが、時折小さい道に入ったりもすることや大阪府内では紀伊路を示す看板がほとんどないので、地図はあったほうがいいのかもと思います。

小栗街道の石碑
たまに小栗街道となっていますが、泉州地域では紀伊路は小栗街道と呼ばれることも多いです。
阪堺上町線

阿倍王子神社をでて30分ぐらいで住吉大社に着きます。ただ、紀伊路が通るのは住吉大社の裏の道なので、気づかないとそのまま通り過ぎてしまうかもしれません。入り口の近くに有名なお味噌屋さんがあるので、そこを目印に曲がるとすぐにあります。せっかくなので住吉大社にも寄っていきました。熊野詣でをする人はきっとこうやって住吉大社によって旅の安全をお祈りしたんでしょうね。

500年以上の歴史ある味噌屋さん
この味噌屋さんは500年以上やっているそう。ここを曲がれば住吉大社です。
住吉大社。大阪で最も有名な神社です。

紀伊路: 住吉大社~大鳥大社

住吉大社からどんどん南下し、住宅街を抜けて大和川へ向かっていきます。住吉大社から少し下ったところの墨江小学校の辺りが津守王子があった場所だと言われていますが、現在は何も残っておらず、石碑すらありませんでした。大阪では住宅開発のために王子がなくなってしまったところも多いです。

津守王子はこの墨江小学校のあたりにあったようですが、詳しいことはわからないようです。

住吉大社から歩いて30ほどで大和川。大阪市と堺市の教会でもあり、泉州と摂津の境でもある大きな川です。これほど大きいと、昔の人は渡るのがさぞ大変だったんだろうなと想像してしまいますが、元々大和川はここを流れておらず、現在のように付け替えられたのは18世紀初期のことなので、熊野詣でが盛んだったころには存在していなかったようです。ちなみにこの大和川、昔は目も当てられないほどの緑色の汚い川だったのですが、水質はここ10年で見違えるほどよくなりました。

大和川
大和川を渡ります。

さて、とうとう堺市です。堺といえば、南蛮貿易で発展した街で歴史的なスポットもすごくいろいろあるのですが、実はそんな歴史的なものがあるのは同じ堺市でも大道筋(紀州街道)周辺や堺駅周辺の海側。熊野街道は海から離れたところを通るので、沿道には古墳以外の目立った場所は残念ながらありません。大和川を越え、大阪刑務所のあたりに境王子址があり、方違神社の脇を通って反正天皇陵から仁徳天皇陵へと向かいます。

境王子。
ここでいろいろな街道が分岐します。右が紀伊路、左が高野街道と竹ノ内街道です。

仁徳天皇陵は百舌鳥古墳群の中心となる古墳で、日本最大の前方後円墳。全長は840mもあり、天皇の墓となる墳丘の部分は3重の堀に囲まれているため全く見えません。そもそも仁徳天皇が埋葬されているのかどうかも定かではなくなってきているのですが、それでも、2019年に世界遺産になりました。とはいえ、なる前とあまり変わっておらず、地元の人がランニングしているだけで、あまり観光地としては発展していないような気がします。

歩道橋の上から仁徳天皇陵も見えます。

仁徳天皇陵を過ぎると、大仙公園の直前で大きく海側へと逸れ、南宗寺の近くを通ってからまた山側へと戻って来ます。かなり迂回する感じなので、そのまま地図を持てまっすぐ行ってもいいような気もするのですが…住宅街の小さな道を行くので、結構わかりにくいです。鳳まではここからさらに1時間か1時間半って感じです。

堺の住宅街を通る紀伊路
仁徳天皇陵を過ぎたら、しばらくは住宅街を歩いていく感じです。
紀伊路沿いの石津神社
石津神社。日本最古の戎社だそうですが、候補は複数あるようです。
石津川を越えます。北畠顕家はこの石津川のほとりで戦死しました。

紀伊路: 大鳥大社~和泉府中

そしてとうとう大鳥大社まで来ました。大鳥大社は泉州の一宮神社であり、泉州では最も有名な神社の1つです。関東を征服したヤマトタケルが、白鳥になった後に立ち寄ったのがこの場所だとされており、ヤマトタケルを祀る由緒正しい神社です。

紀伊路はこの大鳥大社から鳳駅を通り、鳳本通商店街を抜けていきます。この大鳥神社から15分ほど離れたところ(紀伊路から少し離れたところです)に大鳥居王子があったようなのですが、あったとされる場所まで行ってみても残念ながら石碑すらありませんでした。

大鳥大社
このNTTのあたりに大鳥居王子があったようですが、周りには石碑も何もないです。
鳳本通商店街。街道が商店街になっているところは実は結構多いです。
泉州地方の商店街はシャッター商店街が多いのですが、ここは結構栄えているほうかも。

商店街を抜けると大きな道(府道30号線)を歩きますが、しばらくすると30号線を逸れて小さな道を歩きます。特に何かがあったりするわけでもないのですが、なんとも街道らしい雰囲気をした日本らしい道です。こういう道だと楽しんで歩くことができます。

紀伊路。散歩って感じです。

聖神社の鳥居を過ぎると篠田王子です。さらに、この篠田王子から歩いて15分ほどで平松王子があります。篠田王子は小さな祠がありますが、平松王子は碑以外は何もありません。どちらも小さいので結構探しました。篠田山駐屯地を過ぎて、泉井上神社まで来ると和泉府中はもうすぐって感じです。和泉府中が近づいてくると新しめの家が増えてきます。

篠田王子
篠田王子。警報ブザーがあるので、ゆっくり見てられないです。
平松王子跡
平松王子。石碑だけです。
この辺りにも時折、歴史を感じさせるような家があったりします。
泉井上神社。「和泉」の名前はこの神社にある泉から来ています。

さて、ようやく今日の目的地である井ノ口王子に到着です。阿倍王子神社から結構な距離があり、歩いて6時間ほどかかりました。なかなか遠かった気がしますが、見どころが点在しており、ただ歩き続けるだけって感じではないので、十分楽しむことができました。それになにより大阪の歴史が詰まったおもしろい道だったと思います。

この井ノ口王子はJR阪和線の和泉府中の駅前からおよそ10分ほどのところにあります。和泉府中から大阪市内へは快速電車でおよそ25分程度、和歌山へも30-40分程度で行くことができます。次は和泉府中から大阪の最南端である山中渓までを一気に歩きます!!

井ノ口王子

 

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