中山道: 柏原~彦根(高宮宿)
中山道も県境を越えてとうとう滋賀県。今回は雄大な伊吹山をバックに歩きながら、峠を越え、とうとう琵琶湖が見えてきます。今回も見どころが多い散歩です。
中山道を歩く
米原から大垣方面に数駅乗ると柏原の駅。岐阜県との県境もとても近いです。そして、駅から歩いてすぐのところが柏原宿です。今回はこの柏原宿から20kmほど歩いて彦根の高宮宿を目指します。
見どころがとても多く、街道の雰囲気がしっかりと残っています。
柏原宿
柏原宿は江戸から60番目の宿場。本陣1、脇本陣1、旅籠が22軒あり、中山道の中でも最も大きい宿場のうちの1つでした。現在ではあまり歩いている人はいないのですが、昔の屋号を掲げているなど、中山道の保存運動に取り組んでいるんでしょうね。

旧家も多く残り、なんとも街道の雰囲気があるところです。
この柏原宿の特産物として知られているのは艾。艾はヨモギからできており、お灸を作るのに使われます。昔は多数の艾があったようですが、今ではその数は減っており、現在では1軒のみ存在しています。

柏原宿から小川の関を越えて醒井宿へ
中山道は柏原宿を出ると、JRから逸れて醒井宿へと向かいます。街道は山に囲まれ、景色はだいぶ田舎らしい感じです。
柏原と醒井のちょうど中間地点までくると、中山道の旧道が残り、数百メートルほど森の中を歩きます。ちょうどこの辺りは小川(こかわ)の関で、中山道の前身となる東山道の関所の比定地。館跡も確認されていまが、現在は関所のような感じはあまり残っていません。
小川の関を抜けると梓で、このあたりも松並木がきれいです。桜もあるので、春にはとってもきれいなんでしょう。しばらく国道を歩いたら、脇の道へと入っていき、醒井宿です。
醒井宿
醒井宿はJR醒ヶ井駅付近にある宿場のことで、霊泉『居醒の清水』などからこんこんと湧き出る水が地蔵川となって街道沿いに流れています。きれいな川の中には梅花藻が生え、天然記念物のハリヨが住んでいます。なんとも美しい宿場です。
居醒の清水は古事記にも登場する湧き水で、伊吹山で山の神に遭遇した後に病にかかったヤマトタケルはこの居醒の清水を飲むとたちまちに回復するのですが、ここより南下した三重のあたりで体力がつき、亡くなってしまうんですよね。古事記でも最も印象深い場面の1つです。
醒井宿は本陣1, 脇本陣1, 旅籠は11軒と中規模の宿場だったと思われます。今ではこれらの建物は現存していないのですが、醒井宿にはなんと問屋場が残っており、これは全国的にもかなり珍しいもの。
街道をずいぶんと歩いていますが、現存する問屋場は初めて見ました。
醒井宿から番場宿へ
醒井宿を出ると、米原JCTを越えて番場宿はすぐ近く。北には伊吹山と南には霊仙山と大きな山々に囲まれたところで、景色がとてもきれいです。
すぐ近くを東名高速が走るので少しやかましい気もしますが、人が誰もいないよりもいいんでしょうね。
楓の並木道を通ると、もうすぐ番場宿です。
番場宿
番場宿はちょうど峠の手前にあるのですが、駅から離れていることもあってか宿場らしいものは何も残っておらず、人通りもないので少し寂しい雰囲気です。
本陣や脇本陣も1つずつあったのですが、宿場はわずか百メートル程度の長さしかなかったようで、中山道でも最も短い宿場の1つでした。
そして番場と言えば、長谷川伸の『瞼の母』でよく知られる番場の忠太郎のふるさと。『上と下の瞼を合わせれば、昔の優しいおっかさんの面影が浮かんでくる』の忠太郎。

ちなみにこの番場宿から1時間ほど山を登ると続100名城に選ばれた鎌刃城があるので、今では宿場よりもそっちのほうが有名なようですね。
摺針峠を経て鳥居本宿へ
さて、番場宿を出ると景色は一気に峠らしくなってきます。中山道は名神高速にそって坂を上がり、まずは小摺針峠。坂の途中で後ろを振り返ると伊吹山がありますが、ここで見納めって感じです。
この辺りは高速道路ができてから一変した感じなんでしょうか。かろうじて地蔵なども残りますが、あまり峠らしい感じはありません。この辺りからは彦根市に変わります。
そこからさらに坂を上がっていくと摺針峠。名前の由来は若き弘法大師がここを通りかかった時に、針をなくしたので斧を削って針にしようという老婆の言葉に感銘を受け、自身も修行に励もうと思ったから。
昔はここに望湖堂と呼ばれる本陣にも劣らないような立派な茶店があったのですが、火事で焼失してしまいました。さらに昔は琵琶湖の内湖もあったのですが、埋め立てられてしまったので、ここから見る景色は昔のそれとはずいぶん違うんでしょう。
今では峠にお寺があり、天気がいい日には境内からは琵琶湖を見ることができます。昔の人はここから琵琶湖を見て、もうすぐ京都だと興奮したんでしょうね。
ここから琵琶湖側へと降りていく道は結構な急坂です。途中、旧道が残っていて、山道へとそれていきます。訪問時は冬だったこともあり、道はきれいに整備されていました。
下りたところの少しそれたところに北国街道との分岐を表す道しるべがあるので、見逃さないように注意です!!
この坂を下りればすぐに鳥居本宿です。
鳥居本宿
鳥居本宿は本陣1, 脇本陣1, 旅籠が35あった中規模の宿場で、その名前は多賀大社の鳥居があったことに由来します。ずっとまっすぐな道の両側には古い家屋がいくつか残っており、なんとも街道らしい雰囲気を味わうことができます。
鳥居本宿は「さんあか」で知られるように、赤玉神教丸、赤い合羽、すいかの3つの赤いものが特産物でした。合羽は今では営業しているお店はないようですが、街道を歩いていると、合羽の看板を見かけたりすることができます。
高宮へ
さて、鳥居本宿を出ると高宮までもうすこし。すぐ近くには新幹線が走っていたり、名神高速があったりして少しにぎやかになってきました。
彦根ICをすぎたあたりからは彦根の住宅街の中を通るので、あまり街道らしい雰囲気はありません。芹川を越え、近江鉄道の踏切を渡るとすぐに高宮宿。今日の目的地にようやく到着です。
柏原からだと結構な距離があった気がしますが、アップダウンも激しくなく、見どころも多く、なかなか楽しいお散歩でした。
次回はこの高宮宿からスタートし、近江八幡まで歩きます。
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